こじれるコンプレックス

こじれるコンプレックス

ラジオを中心に好きなことを自由に書いているブログ

沖縄の女性遺棄事件で米軍属逮捕。この事件から各紙は何を見たか

沖縄県に住む女性が4月下旬から行方不明になっていた事件で、5月19日に死体遺棄容疑で米軍属の男が逮捕された。
このニュースを沖縄の地元紙2紙は号外を発行して報道した。
 
その後、岸田外相がケネディ駐日大使に抗議したことや、容疑者が殺害を認める供述をしたことなどが報道されている。
 
沖縄の地元紙は20日に、在京紙は21日の社説でこの問題をあげて論じている。
各紙がどんな論調で取り上げたのかに興味を持ったので、読み比べをしてみた。
その上で、ポイントをまとめてみることにした。
 
※読み方
「」の中は、見出しをそのまま引用したものである。
<ポイント>は、各紙が主張として述べている箇所をピックアップしている。
<あげている事実>は、事件や基地に関するデータを取り上げているところをピックアップした。
ただ、あくまでも私がとりあげたポイントであるため、詳しく知りたい場合は各紙を読んで確認する必要がある。社説ならホームページですぐに読める。 
 

朝日新聞「基地を減らすしかない」

<ポイント>
・米軍関係者による事件を繰り返さないために、沖縄の基地の整理・縮小を急ぐしかない
・日本の安全に米軍による抑止力は必要だが、そのために平時の沖縄県民の安全・安心が脅かされていいはずがない
・辺野古移設の見直しや日米地位協定の改定も、改善の努力を始めなければならない
<あげている事実>
・県警によると、復帰から2015年までの在沖米軍人・軍属とその家族らによる殺人や強姦などの凶悪事件は574件にのぼる
・日米両政府は米軍普天間飛行場の返還で合意して20年がたつが、未だ返還されていない
 

毎日新聞「県民の怒りに向き合え」

<ポイント>
・日本政府は、沖縄の不安や怒りがいかに深いか米国に訴えるべきだ。その上で、基地負担軽減に一層取り組む必要がある
・日米地位協定で定めている裁判権の改定についても、犯罪抑止の観点から議論を促したい
・主要国首脳会議(伊勢志摩サミット)で予定される日米首脳会談は、基地の整理・縮小や犯罪の防止など米軍基地問題で真剣な意見交換をする好機だ
<あげている事実>
・整理・縮小計画が決まって20年が経つが、減少率は1ポイントに届かない
・凶悪事件はなくならず、2015年も沖縄では3件の強盗事件が起きた
 

読売新聞「再発防止へ厳正対応が必要だ」

<ポイント>
・申し入れや抗議といった対応は、オバマ米大統領の広島訪問の影響に対する日本政府の強い危機感の表れか。米側も問題意識を共有し、真剣に対応している。
・米軍関係者による事件が続くのは過去の対策が不十分だからだ。米軍の教育が機能したのか検証の必要がある。それを踏まえて綱紀粛正策を実施しなければならない。
・事件を辺野古移設と絡めて政治利用してはいけないが、日米両政府は米軍基地の整理縮小など、沖縄の負担軽減策を着実に実行していくべきだ。
<あげている事実>
・過去の対策の例として、2012年に起きた強姦事件の後には夜間外出禁止令を発した
 

産経新聞「怒りを悲劇根絶につなげ」

<ポイント>
・政府は米側に強く抗議し、全容解明への全面協力と、具体的な再発防止策を求めてほしい
・沖縄は地政学的にも国の守りの要諦であり、米軍の駐留は抑止力として欠かせない
・米軍の問題と事件に対する感情は別の問題である。その感情は、悲劇の根絶に向けた取り組みにぶつけたい
<あげている事実>
・日米地位協定は、在日米軍の軍人・軍属が公務中に事件・事故を起こした場合、米側に第1次裁判権があると規定している。このうち軍属については、2011年に米側が刑事訴追しなければ日本側で裁判ができるよう見直された
 

日経新聞「米軍絡みの犯罪防止に全力を」

<ポイント>
・事件があるたびに米政府は綱紀粛正を誓うが、長続きしない。地域の一員であるという意識が不足していないか。日米両政府は沖縄県民の心情に寄り添い、犯罪をなくす努力をすべきだ
・沖縄県民を同じ島で生活する仲間と思う気持ちが米軍にあれば、このような蛮行ができるはずはない。
・「しっかり対応してもらった」と県民が思う振る舞いは日米両政府にできるか。普天間移設のハードルがさらに高くなるかどうかの正念場である
<あげている事実>
・日米は2006年、沖縄の海兵隊のうち約8000人を2014年中にグアムに移すことで合意したが、施設整備の遅れなどで予定通り進んでいない
 

東京新聞(中日新聞)「沖縄を安心安全の島に」

<ポイント>
・県民を守るために、日本政府は米国との交渉に全力を尽くすべきだ
・米兵・米軍属による犯罪がやまない背景には、不平等を解消する抜本的見直しがされてこなかった協定の存在がある
・事件が名護市辺野古の新基地建設に影響を与えるのは必至。オバマ米大統領に沖縄の思いを毅然(きぜん)として伝えることも政府の責務だ
<あげている事実>
・全国の警察が2006年から10年間に摘発した殺人や強盗などの凶悪犯は62件91人。沖縄では毎年のように発生している
 

沖縄タイムス「米軍がらみ 最悪の結末」

<ポイント>
・米兵や米軍属の犯罪におびえて暮らさなければならない日常が戦後71年たっても続くというのは、あまりにも異常である
・事件事故のたびに日米両政府に抗議し、大会を開き、綱紀粛正と再発防止を求めてきたが、これまでのやり方ではもうだめだ。もはや再発防止要請ですますレベルではない。
<あげている事実>
・1972年の復帰から2015年までの43年間の米軍関係者による犯罪検挙件数は5896件。うち殺人、強盗、強姦、放火などの凶悪犯は574件と10%近くを占めている。米兵に民間人が殺害される事件も12件発生した。
 

琉球新報「日米両政府に責任 防止策は基地撤去しかない」

<ポイント>
・在沖米軍基地の整理縮小に消極的な両政府の責任は極めて重大だ
・基地がある限り、犠牲者が今後も出る恐れがある。基地撤去こそが最も有効な再発防止策である
・米軍には軍属も教育する責任が当然ある。だが事件がなくならないことからして、米軍の教育には限界がある
<あげている事実>
・米軍専用施設面積のうち、沖縄が占める割合は2014年時点の73・8%から、ことし1月現在では74・46%に上昇した
・県内での米軍人・軍属による殺人や女性暴行などの凶悪犯罪は1997年の69件をピークに減少し、95年以降は2013年を除き、毎年1~7件の発生である
 
なお、沖縄タイムスと琉球新報は20日だけでなく、21日にもこの問題に更に踏み込んでいる。
両紙とも主張は変わらず、日米両政府や米軍に対する怒りや反発を鮮明にした。
その上で辺野古基地への移設反対や、沖縄からの基地撤去という取り組みをする必要があると述べている点もおおむね共通する。
 
全国紙にしても、地元紙にしても、残虐な事件であるという認識と、事件の原因究明を米側に強く求めるべきだという論調である。
ただ、沖縄に基地が多くある現状をどう捉えているかは各紙異なり、各紙の捉え方はだいたい私の予想通りである。
 
社説読み比べを通して、何となくでしか分かっていなかったレベルのことを改めて理解するきっかけにはなった。
沖縄県民が米軍に対する反発を持つきっかけは何だったのか。
そもそも「米兵」と「軍属」はどう違うのか。
日米地位協定はどのような問題を抱えているのか。
この事件は、沖縄に基地が多くある問題とどう結びつくのか。
 
沖縄出身として、もっとこの問題に敏感でなきゃとは思っている。