こじれるコンプレックス

読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

こじれるコンプレックス

ラジオを中心に好きなことを自由に書いているブログ

『ニューカルマ』を読んだ。甘い蜜を吸ってしまった人間の欲深さに戦慄する。

新庄耕さんが書かれた小説『ニューカルマ』を読んだ。
ネットワークビジネスに手を出しそうになった経験も手伝ってか、私はのめりこむように読んでいった。
 
ネットワークビジネスやそのビジネスに関わる人たちに対して、なぜ不自然さや薄気味悪さを覚えるのか。
その疑問に対する私なりの答えが、読んでいる内におぼろげながら見えてきたような気がした。
でも、その「薄気味悪い」人に、もしかしたら私もなっていくかもしれない。現に、なりかけた。
ニューカルマ

ニューカルマ

 

 

あらすじ

リストラが噂される電機メーカーの関連会社に務める主人公。
彼は大学時代の友人に誘われる形で、ネットワークビジネスを始める。
一時は成功をつかむも、しつこい勧誘を繰り返したことで友人を失い、更にはスキャンダルの発覚で失脚。借金がかさみいったんは足を洗うことになる。
その後普通の仕事に就いたが、営業で出向いた会社の社長に出会い…。 
 

著者から見るネットワークビジネス 

著者である新庄耕さんも交際していた女性にネットワークビジネスに勧誘されたことがあるという。
インタビュー記事を読むと分かるが、新庄さんはあくまでもネットワークビジネスを冷静な目で見ている。決して「ネットワークビジネス=悪」とは捉えていない。
 
新庄さんにとって、結末は「ハッピーエンド」らしい。
ただ、私はあの結末を読んで、人間の欲深さというか、えげつさを感じた。
何度痛い目を見ても、一度でも甘い蜜を吸ってしまうと、その味を忘れられなくなるんだな、と悲しくなった。
いくら主人公が成長した、と言っても、結局彼は信頼していた社長にされたことを、自分でもしてしまうのではないか、と不安になる、そんな結末である。
 

私の読書感想

この本を読み終えた時、私はネットワークビジネスに手を出さなくてよかったと本当に思った。
ただ、もう絶対手を出さないと言い切れるだろうか。
金に困っていた訳でも、仕事に悩んでいた訳でもないのに、はまりかけたのだ。
これが経済的に辛かったり、出世していく同期や活躍していく友達に対して劣等感にさいなまれていたりすれば、はまる可能性は高くなる。
ネットワークビジネスって、自分とは関係ないどこかの世界の特別な話ではないのだ。 
 
 『ニューカルマ』の主人公が勤める会社ではリストラが実行されており、漠然とした不安から、ネットワークビジネスの誘いに乗ってしまったともとれる。
そして、彼は政治家の友人に対する劣等感を持っていて、その気持ちが彼を成功に対して執着させている部分がある。
 
ネットワークビジネスに関わっている人がこの本を読んでどう思うか気になるけど、きっと黙殺するだろう。
いくら著者が中立的な思想でも、書いている内容はたぶん彼らにとって都合が悪い。
何より、彼らが勧誘しようとしている人たちに薦められる本ではない。
 
ただ、この本はネットワークビジネスをよく知らない人が読んでも、知っていて特に偏見を持っていない人が読んでも面白い。
欲深さや誰かと比べる気持ちを見事に浮き上がらせていて、その主人公の気持ちに寄り添いながら読んでみると、この小説がネットワークビジネスの光と闇をただ取り上げたいだけじゃないことが分かってくる。
ニューカルマ

ニューカルマ